特集
第2回 理念作成と事業計画/[その1]理念の作成―社会の“不”を満たす
連載第2回目では[その1~4]にわたり訪問看護ステーションの運営に必要な理念と事業計画について解説していきます。
[その1]のテーマは“理念”です。理念は、事業の運営を行ううえで必要不可欠とされ、事業所の意思決定の判断基準や職員の行動の拠り所となる重要な役割を担っています。あらためて理念の意味や定める目的を押さえ、よい理念のつくり方を確認していきましょう。
[その1]のテーマは“理念”です。理念は、事業の運営を行ううえで必要不可欠とされ、事業所の意思決定の判断基準や職員の行動の拠り所となる重要な役割を担っています。あらためて理念の意味や定める目的を押さえ、よい理念のつくり方を確認していきましょう。
●ここがポイント!
・理念は組織の方向性を定めるとても大切な“言葉”である。
・理念はバリュー、ミッション、ビジョンから構成される。
・自分自身を振り返り、問いかけ、見つめ直すことで理念を作成する。
・理念は組織の方向性を定めるとても大切な“言葉”である。
・理念はバリュー、ミッション、ビジョンから構成される。
・自分自身を振り返り、問いかけ、見つめ直すことで理念を作成する。
“理念”は事業の起爆剤!
事業を始めるにあたって、どの起業本を読んでも、どんな経営コンサルタントに話を聞いても「理念」を作成することはとても大事といわれます。それは、理念が、皆さんの行っている事業の「根底にある根本的な考え方」を表わすものだからです。言い方を変えると、理念は、事業への「熱意」と「動機」が表現されている大切な“言葉”なのです。
どのような業種でも、起業するときは自分の好きなことを仕事にし、毎日ワクワクしながら働けるような成功のイメージを描けることが必要です。
ワクワクする想いをしっかりと言葉に表し、多くの人に伝えることが大切です。共感を得られれば協力者が現れ、さまざまな化学反応を起こし、多くのチャンスや成長の機会を得ることができます。
このように理念とは事業をよりよくする“起爆剤”の要素をもっています。
理念を構成するもの
理念についてもう少し詳しく見ていきましょう。理念を因数分解すると、「バリュー」、「ミッション」、「ビジョン」の3つの要素に分解することができます(図1)。
図1 理念の構成要素
バリューとは「顧客に対する価値」を意味します。そしてミッションとは事業所が「果たすべき使命」を表現したものです。ビジョンは「実現をめざす未来」を示します。理念を定めるには、これら3つの要素についてしっかりと考え、明文化していく作業が必要です。
理念のつくり方
ではバリュー、ミッション、ビジョンについてどのように考えればよいのか、そのポイントを順にご紹介します。
バリュー
あなたの顧客は誰でしょうか。バリューを考えるにあたり、価値を提供する相手、つまり顧客が誰かを考えることが大切です。あなたが行う事業の内容によって、顧客は利用者やその家族だけではなく、開業医やケアマネジャー、事業所の職員も考えられます。地域全体が顧客になる場合もあるでしょう。このように、顧客とは皆さんが事業活動を行うことで影響を受ける関係者を指します。
さて、皆さんの顧客は何を価値あるものと考えているのでしょうか? それを考えるのが次のステップ、ミッションです。
ミッション
皆さんは、なぜその顧客に対し事業を行うのでしょうか。その事業にはどんな意味があるのでしょうか。この問いに対する答えは、「顧客の“不”を探す」視点で考えていきます。
例えば、顧客を「独居・要介護高齢者」とした場合、以下のような“不”が挙げられます。
不便 → 足が不自由ななかでの遠方の病院への通院
不満 → 病院での長い待ち時間
不安 → 自宅での1人暮らし など
不便 → 足が不自由ななかでの遠方の病院への通院
不満 → 病院での長い待ち時間
不安 → 自宅での1人暮らし など
“不”の付くところに顧客のニーズが隠されています。顧客の“不”(ニーズ)をくみ取り、ニーズを満たすことで、皆さんの事業に意味が生まれるのです。
ここで、バリューに関する問いを示します。
・皆さんは、顧客にどのような価値を提供しますか。
・それは顧客のニーズにマッチしていますか。
・マッチしていると考える理由を説明できますか。
・5年後、10年後、顧客のニーズはどのように変化すると考えますか。
・これからも顧客のニーズの変化に対して提供する価値はマッチし続けるでしょうか。
・マッチすると考える理由を説明できますか。
・それは顧客のニーズにマッチしていますか。
・マッチしていると考える理由を説明できますか。
・5年後、10年後、顧客のニーズはどのように変化すると考えますか。
・これからも顧客のニーズの変化に対して提供する価値はマッチし続けるでしょうか。
・マッチすると考える理由を説明できますか。
これらの問いは、顧客のニーズに対して、皆さんがもつ経営資源(人、モノ、金、情報)をどのように活かして価値に変えていくのか、または不足しているものをどのように補っていくかを考えるためのものです。
ビジョン
最後にビジョンについて考えます。ビジョンは次の問いかけから始めましょう。
「あなたが考える事業の成果とは何か」
「あなたが考える事業の成果とは何か」
皆さんが顧客に対し価値を提供した結果として、どのような成果を得たいか表現してみてください。成果は一つだけでなく、複数あってもよいです。また数字や言葉だけでなく、絵などのイメージを用いて表現してもよいです。
もし「成果」という問いが難しいと感じたならば、次の問いについて考えてみてください。
「あなたは顧客に何によって覚えられたいですか」
この問いは、顧客にどう見られたいかということではなく、皆さんの事業の存在意義を根幹から問い直すものです。価値の提供をとおして、どのような存在として顧客に認識されたいか、すなわちそれが事業に対する価値観や大切にしたいことに結びつきます。
「あなたは顧客に何によって覚えられたいですか」
この問いは、顧客にどう見られたいかということではなく、皆さんの事業の存在意義を根幹から問い直すものです。価値の提供をとおして、どのような存在として顧客に認識されたいか、すなわちそれが事業に対する価値観や大切にしたいことに結びつきます。
それは自分自身の強みを探求することにもつながり、仕事に取り組む気持ちや姿勢に大きな刺激を与えてくれるはずです。自分自身を振り返り、問いかけ、見つめ直すことで理念を作成してみてください。
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齋藤 暁
株式会社ムトウ コンサルティング統括部 部長
中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント
株式会社ムトウ コンサルティング統括部 部長
中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント
医業経営・医療労務専門コンサルタント。全国の医療機関を対象に、中小企業診断士と社会保険労務士のW資格で経営と労務の両面をサポート。
▼株式会社ムトウ コンサルティング統括部
https://www.wism-mutoh.jp/business/consulting/
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編集協力:株式会社照林社