後進に繋ぐ在宅看護への想い【訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック】
全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 中四国ブロック、杉本 由紀子さんのご登場です。杉本さんは現在、訪問看護ステーションでの後進育成を行うと同時に、看護大学で教鞭をとっています。 今回は、地域包括ケアシステムの中で訪問看護師が担う役割の重要性や、新卒訪問看護師輩出への想いなどを教えていただきます。 執筆:杉本 由起子訪問看護認定看護師/人間環境大学松山看護学部(地域・在宅看護学領域)・AOIケアリングステーション非常勤勤務大阪府出身。看護学校卒業後、大学病院等に勤務。結婚、出産後「目指したい看護」を模索し、「在宅終末期看護、在宅看取り」実践のため1995年より訪問看護ステーションに勤務。2012年 群市医師会に地域連携室を開設、「厚生労働省在宅医療連携拠点事業」や在宅緩和ケア推進モデル事業受託。2016年仲間と訪問看護ステーションを立ち上げ、2021年から現職。2001年 介護支援専門員資格取得2010年 訪問看護認定看護師教育課程修了2017年 大学院看護研究科看護学専攻臨床看護学分野高齢者看護学博士前期課程修了2021年 看護大学に勤務し、立ち上げた訪問看護ステーションでアドバイザー的役割に従事 海を超えたネットワーク! 私が所属する日本訪問看護認定看護師協議会の中四国ブロックは、美しい島嶼(とうしょ)部の浮かぶ瀬戸内海を超えたネットワークが自慢です。私が入会した当初は3人のメンバーでしたが、今では10倍近いメンバーになりました(2023年11月現在)。 ここ数年、ブロック長を中心に力を入れている活動は、「臨床推論」「在宅看取り」の講義です。臨床推論は主に新人訪問看護師を対象に開催し、ファシリテーターの役割を訪問看護認定看護師が担っています。 また、中四国エリアの特徴として、在宅・慢性期領域パッケージを含む認定看護師教育課程在宅ケア分野が徳島大学にあることも大きいでしょう。認定資格を取りやすい立地環境のため、メンバーの年齢層は幅広いです。訪問看護創設期を率いてきた世代はいわゆる「訪問看護第一世代」と呼ばれますが、その想いを引き継いだ第二世代、介護保険が始まって以降の第三世代のメンバーもおり、幅広い知識や情報の共有がしやすいことも誇りです。 中四国ブロックメンバーの訪問看護認定看護師も在宅ケア認定看護師も、みんなで協力し合って日本訪問看護認定協議会を盛り上げています。 訪問看護師は地域包括ケアのキーパーソン! 私の在宅看護実践における大きな経験・強みは、「在宅医療連携推進事業」のモデル事業に参加し、地域文化を重視したシステム作りに従事できたことです。 地域包括ケアシステム構築のためには、在宅医療の推進が必須。また、地域独自の方法を早急に確立することが求められています。難易度が高いながらもこれらの事業を無事に完遂できたのは、訪問看護認定看護師教育課程で培った、「実践・指導・相談」の学びがあったからこそです。 多職種との交流や、職種を超えたネットワーク・チーム作りのためには、情報共有のための共通言語化が欠かせません。多職種間を繋ぐことは訪問看護師の地域での大事な役割でもありますので、経験を生かして「顔の見える関係作り」に貢献できたと思っています。 訪問看護認定看護師として新たな働き方へ 2016年に訪問看護ステーションを立ち上げた際の経験についてもご紹介します。以下の3つのポリシーを掲げてスタートしました。 地域住民ファースト開かれたステーション地域課題の発見 例えば、休日・休日料金を設定しない。山間部エリアも活動エリアとする。いつでも地域住人や多職種からの相談を受け付ける。そして、地域の方々とのコミュニケーションを通じて地域課題を見つけることを心掛けてきました。 3人の仲間で開設した訪問看護ステーションも、現在ではケアマネジャーや多職種を含め30名あまりのスタッフ数に。機能強化型訪問看護ステーション1の算定もできるようになりました。現在私は、相談役として訪問看護ステーションに在籍し、臨床現場の後輩育成に関わっています。 また、訪問看護認定看護師としての活動を生かし、看護教員としても働いています。「看護を語る」ことや「在宅終末期看護の魅力」を看護基礎教育の場で学生に伝えていくことで、一人でも多くの学生に在宅看護に興味を持ってもらいたいと思っています。 新カリキュラムがスタートし、「地域・在宅看護」の教育を受けた看護学生たちがどんどん世に出ていきます。これからの地域包括ケアへの強い味方・担い手として、多くの新卒訪問看護師が誕生することを夢見ています。 * * * 「あきらめない看護実践」の場として、在宅看護はキラキラ輝いています。ご利用者さんやご家族とともに、希望を叶える。そんな現場が訪問看護にはあります。そして、どうか仲間とともに多くの「看護の語り」をしてください。その経験は、自己の成長に必ず役に立ちます。 ※本記事は、2023年11月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部 【参考】〇厚生労働省.「在宅医療の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html2023/11/9閲覧〇一般社団法人全国訪問看護事業協会.「訪問看護ステーションにおける 新卒看護師採用及び教育のガイドブック策定事業 報告書」(2016年3月)https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/H27-3.pdf2023/11/9閲覧